ハワイ島3日目(火山)

Pu'u Wa'a Wa'a という、こんもりした山(噴石丘)に登る予定で出発。

しかし到着してみると、今日明日はハイキング禁止の日であった。どうやら Hunting を行っている日らしい(ちなみに僕はハンティングは好きではない。牛肉も豚肉も食べるから、矛盾していることは承知しているが、好きではないことは事実である)。

さてどうするかと少し思案。予定を変更して西側の町、Hilo に行ってみることに。途中ホノカアの町を車窓見学。「ホノカア ボーイズ」という映画で有名な(といっても、僕は見ていないのだが)、のどかなホノカアの町からは眼下に海が見えて、僕はそれがとても好きなのである。

そこから道を上がって(ホノカアは幹線道路から少し下ったところにある)、TEX ドライブインで有名なマラサダを食べる。前回の教訓を活かし、今回はプレーンなマラサダのみ。そしてそれは相変わらずの美味しさだった(しかも安い)。 DSC_4790

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Hilo への途中で Akaka Falls に立ち寄るつもりだったが、入り口が分からないまま(標識があるだろうと思っていたのだが、それが見当たらなかった)、Hilo に到着してしまう。

まずシグゼーンのショップへ向かう。がしかし、運の悪いことに日曜日は閉店であった…。他に Hilo で立ち寄りたいところも休みだったので、Hilo にはやることがないねという話になり、それならば少し足を伸ばして火山を見に行こうということに。

1時間ほどで火山エリア(Volcano National Park)に到着。Visitor Center でガイドのおじさんに、実際に流れている溶岩を見る場所を教えてもらう。2つあるが、簡単なのは Kalapana から行く方法らしいとの情報を入手し、夕方からそこに行くことにする。

Visitor Center は標高が高い場所にあり、風が冷たかった。この調子だと溶岩を見に行く夜は寒いに違いない、と妻のジャケットを買い求め(ジャケットは旅には持参していたのだが、この日は出番がないと思ってホテルに置いてきてしまったのだ)、Kilauea Iki Trail へ。

このトレイルは噴火口跡の中を歩く約6.5Km のコース。2回目なので慣れたもの。1.5時間強で一周し(2度目だったがクレーター状の噴火口跡を歩く体験は面白かった)、流れている溶岩(Lava flow)を見に行くためにクルマを走らせる。

目的地は Kalapana である。 途中でスーパーに寄ってサンドイッチやスパムおにぎり(妻の好物なのだそうだ。実際に美味しいと言って食べていた)を買い求め、Kalapana 周辺の公園の駐車場でそれらを食べる。

Kalapana の溶岩見学入り口の駐車スペースには、すでに多くのクルマが溶岩を求めてやってきていた。 どうやら自転車をレンタルして、それで行ける所まで行き、そこから先をトレッキング(というかゴツゴツしたところを無理やり歩く)のが標準的らしいのだが、それを知らずに僕たちは徒歩だけで行けるだろうと考えて、歩き始める。

しかし、どうやらかなり遠いところまで歩く必要があるということが途中で分かり、引き返して自転車を借りることに。 自転車レンタルをしている店は路上にたくさんあるのだが、妻が目星をつけていた(こうしたところの妻の観察眼は素晴らしいと思う。心の底から) Jeff's Bike という店で自転車を借りる。

そして妻の選球眼が示した通り、ここを選んだのは大正解だった。このショップの夫妻は、とても感じの良い人たちで気持ちよくレンタルをすることができた(そして自転車もきちんとメンテナンスされていて良かった)。 Jeff's Bikes - Bike Rentals at Kalapana Lava Flow Viewing

少し出遅れてしまった感はあるが、自転車を借りて再出発。滑りやすくて運転しにくい砂利道(グラベル)を進む。いくつかのアップダウンを経て、30分弱で自転車で行ける限界のポイントに到着。自転車にロックをかけ、そこから歩く。

まずは事前に聞いた、溶岩が表面を流れていると思われるポイントを目指して歩き始める。しかし向こうから戻ってきた人たちに聞くと、僕たちが向かっている方向には溶岩ポイントはないらしい(スチームが出ているだけとのこと)。その人たちに教えてもらった通り、右に軌道修正して、再出発する。

その右の方角には確かに溶岩が流れているのが見えていたのだが、かなり遠そうだった。本当にあそこまで限られた時間で(自転車を時間内に返す必要がある)、行って帰ることは可能なのだろうか? 疑問に思いつつも、行けるところまで行ってみようと歩き始める。 DSC_4796

もちろん道などあろうはずはない。道しるべもない。照明もない。暗闇の中、少し月明かりがある程度である。幸いなことに自転車レンタルとセットで登山用のヘッドライトを借りていたので、それを頼りに進む。

溶岩が固まった跡(それもかなり最近固まったばかりのようだった)を歩くこと1時間以上。溶岩は見えてはいるものの、なかなかたどり着ないので諦めかけたところで、急に熱気を感じるポイントに到着。暗闇の中目を凝らすと、実は見学者も多くいる。「もしや」と思ったら、やはりそこに表面を流れている真っ赤な溶岩があった。

近寄ると溶岩が発するサウナのような(もちろんもっと近寄るとサウナどころではないのだが)熱気が襲ってくる。つい触りたくなる見た目をしているが、実際には触れるところまで近寄ったら、大いに皮膚を火傷するくらいの熱量であろう。火傷どころか、間違って転んだら人が死んでしまうだろう。考えようによってはかなり危険な場所である。そのような場所に at your own risk とはいえ、入場が許されているのはアメリカらしい。日本だったら、間違いなく立ち入り禁止になっているだろう。 DSC_4814

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しばし流れる溶岩を堪能し(これは本当に貴重な経験だった。僕たちの一生のうち、次の機会があるかどうかは分からない)、自転車を置いた場所に戻る。もちろん帰りも道はない。道なき道、ごつごつした溶岩跡をひたすら海の方向を目指して歩を進める(方向も分かりにくいのだが、溶岩が海に流れ落ちているポイントからは大きな白煙が出ていたので、それを目印に進む)。

戻りは45分程度。もう一つのビューポイントである、海に溶岩が流れ落ちる様子(Ocean Entry という)を少し離れた場所から眺める(これはさすがに、極限までは近づけないようになっている。より近づきたい場合は、海から船で近寄るツアーがある)。あまり時間もなく、5分ほどで退散。

自転車レンタルの時間を気にしながら、自転車で帰路を急ぐ(途中、土埃が目に入って死にそうになりながら…。人生いろいろと辛いことがあるものだ)。結果的には間に合って良かったが、この帰りの自転車ライドも疲れを助長した。 DSC_4828

そこから約2時間(150km 程度か)のドライブでホテルに到着したのは24時ごろ。すでにトレッキングで疲れ果てているところに追い打ちをかけるこの長時間ドライブでも、当然のことながら疲労困憊した。考えたら17時ごろから24時までずっと休むことなく動き続けている。優雅なバカンスのはずが、普段の生活ではあり得ないほど疲れてしまった…。我々の旅はどうしても、かように過酷になってしまう。もうそろそろ、少し軌道修正したほうが良いかもしれないとも思う。

でも「そこがいいんじゃない!」(みうらじゅん)とも思う。今日、流れている溶岩をすぐ近くに見ることができたのは、貴重な体験だった。疲労困憊した甲斐があった。No Pain, No Gain.

シャワーを浴びて、白ワインを飲んで少し落ち着く(この白ワイン、ウィリアム フェーブルのシャブリが、疲れた身体にじんわりと沁みわたる感じがして、とても美味しかった。それは初めて味わう、不思議な体験だった。このようなことがあるから、ワインという飲み物はずっと人に愛されているのだろう)。